名状しがたき退職エントリーのようなもの

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※このエントリーは、2015年1/29に旧ブログで書いたものを転載したものです。
http://yukihanyu.exblog.jp/23404057/

2014年12月31日をもって退職、翌2015年1月1日付けで個人事業主登録、ぎりぎりですが「20代での独立・起業」を果たしました。

よく、退職前後に積もる不満をブログにぶちまけて炎上する、「退職エントリー」の話を聞きます。そういうエンタメもありですが、まずは退職・起業に至るまでの流れに重きをおきたいと思います。既に陳腐化してる「これだから日本の大企業は××」という話でもないので。

===2012・10以前~入社当初===============
2010-2012には東北大学に博士研究員として在籍しており、その後の2012年10月に元いた会社(電機メーカー)の研究開発部門に入社しました。しかし、起業への道は入社以前、東北大学の時にさかのぼります。

その頃は就職で有利になるであろうと考え、「高度博士人材育成センター」でプロジェクトマネジメント(PM)や技術経営(MoT)の勉強をしていました。このプログラムは当時(今でも?)騒がれていた、「博士余り」や「博士は実社会で使えない」といった批判に対して、政府の予算で行われていた博士人材のキャリア支援事業です。しかしこの事業は、担当されていた先生方により、単なるキャリア支援以上の事業となっていました。先生方は生徒に「人間力を磨いて欲しい」、「うちから社長が出て欲しい」と事あるごとに話しており、その熱意は至るところに感じられました。噂によると、この辺りが熱すぎて先生方の間で意見対立が起き、センターを去ってしまった先生もいたそうです。

このプログラムで学んだMoTや経営理論は、研究室での日々の研究活動とは使う脳の領域が全く違う印象でした。日々の研究では、細かい所まで定量測定を行ったり、「わけがわからない」現象についても、定量的に説明できるような理論を考えたり、とにかく物事をはっきりさせる方向で全てが動いていました。しかしMoTや経営理論では、はっきりしないものは、まずはそのままで処理します。はっきりと定義はできないけど存在する物や概念を、とりあえず箱でくくり、箱同士の関係性を組み立てます。そして、箱同士の順番や組み方について最適設計を行います。そのプロセスの途中で、関係性や組み合わせ全体でのパフォーマンスを定量化します。

しかしここで思いました。関係性や組み合わせでのパフォーマンスでの評価など、「経営」とは実は「システム工学」そのもの・・・? 実はこの、経営とはシステム工学であるという印象は、後にITパスポート試験を受けたとき、より強く確信するようになりました。(ITパスポート受験の理由は景品のミクグッズでした・・・ww )

そんな事を考えつつ、「システム技術」の勘所を掴むため、2012年10月からは、その電機メーカーのシステム技術研究開発部門で働き始めました。そういった目的があった以上、退職・企業は既にその頃から規定路線だったのかもしれません。最初は4~5年は居るかなと思っていたし、その後どこへ行くのかもノープランでした。「外資系企業の研究所?」「産総研で何かいいポジション見つける?」というぐらいでしょうか。しかし色々あって、当初の想定よりも前倒しになりました。

===Y部長の体験談======

入社後はビッグサイトや幕張メッセでやっているような展示会に行ったり、仕事を通じてコーディングや統計分析などの新たな技術を習得したり、色々なよい刺激を感じていました。そしてこの手の大企業では、技術の話に加えて「出世術」の話が出てきます。いかに上司に成果をアピールするかなど、実学的な出世術もありますが、まじめに考えてみると「出世術」を立てることは、将来のキャリアを考えることでもあります。

そんな感じで周りに引きずられて「出世」について考えていた2013年、会社の飲み会にて当時部長だったYさんが、乾杯の音頭を取っていました。そこでY部長は「2階層上の視点に立って物事を俯瞰する」ことの重要さについてスピーチをしていました。Y部長自身の体験談がベースになっており、報告を上げるときに上司の視点に立つこと、俯瞰的視点で事業を考えること、などが主旨でした。そしてその中にY部長が研究員から管理職へ昇進したときのエピソードが含まれていました。

Y部長:「ある時部長に呼び出されてねぇ、言われたんだよ。『君はこれまで研究をやってきたが、これからはマネジメントをやってくれ』と。マネジメントなんて今までやったことないし、俺は「えぇー」と思ったけど、それからいろいろ勉強して、色々な人に助けてもらいながら何とかやっていけるようになったんだよな~」

以前から言葉では分かっていました。研究者は当初は白衣を着て実験室に立ちますが、キャリアを積むに伴い、人を率いて研究を進める方向にシフトしていかなければいけません。この辺は大学でも同じです。そもそも一人でできる研究には限界があるし、研究員、助教、准教、教授と昇進するにつれて、実験から科研費申請・報告書作成へ、そして研究室の運営や戦略的共同研究など、マネジメントや経営の色が濃くなっていきます。

さて、将来的にはどのみちマネジメント・経営に進むことになるのであれば、40歳まで待つ必要がそもそもあるのか...? 会社は能力主義を掲げているので、年齢に関係なく素早い昇進も理屈上は可能でした。しかし、日本の老舗企業は少子高齢化で年齢層が上に偏っており、若手が出世しようにも勤続年数が長くて経験もある競争相手が上に沢山います。一方、大学の同期はコンサル業界で既に「経営」を第一線で学んでいました。

===S部長との面談======

2013年、部長がYさんからSさんに変わりました。

新任のS部長は責任感が強く、温厚で腰が低く、その性格はいつもきれいに整理整頓されていたデスクにも現れていました。それに対して前任のY部長の机は乱雑むちゃくちゃで、整理整頓パトロールが入るたびに何らかの指摘を受けていたほどです。S部長は良くも悪くも几帳面なサラリーマン中間管理職でした。S部長の発するメッセージにはとにかく「組織で」が念頭にあり、社内研修の教科書に書いてあった組織人としてのあり方を忠実に守っているような印象も受けました。大企業なら当然かもしれませんが。

しかし、教科書どおりのサラリーマンであることの弊害が、マイクロマネジメントという形で現れるようになりました。その結果、展示会に自由に行くことができなくなったり、予算がどうとかで出張や外出が制限されたり、職場は残念ながら知的刺激という点では劣化していきました。マイクロマネジメントはクリエイティブの敵だという浅い議論がありますが、その浅い議論すら説得力を持ってしまうほど、どこかで見たような景色でした。

そして2013年12月、自分の2013年上半期の業務評価について、S部長とのフィードバック面談がありました。

S部長「君は研究を進める事に関しては大丈夫だと思うから、これからは会社の中で動いていく術を身につけていった方がいいね」
自分「それは例えば、事業部の技監さんと話しができるようになるとか?」
S部長「いや、それはない。何でか分かる?」(ドヤ顔
自分「仕事の意思決定の粒度というかレイヤーが違うから、話をしてもしょうがないから?」
S部長「違う」
自分「技監さんとは現場レベルの話をしてもしょうがないから?」
S部長「違う。君とは時間単価が全然違うから。組織の上にいる人間というのは、重い責任を背負ってぎゅうぎゅうのスケジュールで働いているんだ。だから時間単価はずっと高いんだ。」

当たり前のことですが自分の時間単価の安さを再確認しました。では、将来の自分の時間単価は・・・? ずっと会社にいれば、そのうち昇進して時間単価が上がるのでしょう。でも5年10年後の話です。それでも「石の上にも3年」とか「桃栗3年柿8年」とか「忍耐」とかよくある「アリガタイ言葉」を信じて10年頑張った結果・・・・立派な中間管理職になりました!!!!!

・・・・・で?(´・ω・`)

当初より言葉では分かっていたことだし、容易に想像できたことです。2014年初頭、会社がなって欲しい自分の姿と自分が将来なりたい姿の間に、埋めがたい差が出てきました。そして4月頃には「潮時」という言葉が頭によぎり始めました。予想より早かった感じです。

===高齢化の弊害=======

入社して間もなくある技術の開発に取り掛かり、それには退職の時まで携わっていました。スタート当初は一気に開発を進めることができ、半年程である程度の形にすることができました。しかし、それが新たな問題を引き起こすようになりました。しかもこの問題は誰のせいでもない、会社の構造的課題に起因していたため、かなりたちの悪いものでした。

技術開発は直属の上司だった課長さんと共に行っていました。当初は課長さんが社内他部署の要請や、マーケットの動向を見ながら方向性や制約条件を提示し、自分がそれを元に技術開発を行うという業務分担でした。この分担はうまく行き、入社半年で基本特許の提案までこぎつけました。この分担には、自分が担当していた部分は化学の専門知識が必要だったため課長さんは関与できず、逆に課長さんが担当していた部分は勤続年数が浅いため自分は関与できず、というやや後ろ向きの理由もありました。ただ、会社でのポジションと責任範囲という観点から見れば、まぁありでしょう。

しかし技術がある程度形になり、説明資料もある程度できてくるあたりで微妙な問題が発生し始めました。まず、制約条件や方向性を決めていたはずの課長さんが、現場のデータ分析やエクセル表作りまで直接関与して来るようになりました。しかし、その領域は課長さんが持ち合わせているとは限らない、化学の専門分野の世界になってきます。その辺の専門知識がない状態で現場作業をしようとすると、意図せず不条理な要求や見込み違いをしてしまいます。ゴールは一応共有はされていましたが、アプローチの違いでも事あるごとに衝突が生じるようになりました。しかし、それを指摘しても上司権限で押し切られる状況が頻発するようになり、自分で主体的に仕事をするインセンティブは失われていきました。また、課長さんが現場作業まで関与するようになった結果、現場では日々起こっては都度修正される細かいミスなども目に留まるようになり、それを巡って怒号が飛ぶようになり、職場環境は急速に悪化してしまいました。

しかしなぜこうなってしまうのでしょう。思うに、その課長さんが「プレイング・マネージャー」という、マネージャーでありながらマネージャーではない何かであったことが原因なのではと思います。課長の仕事をするべき人間が、末端の仕事に手を出すから問題になってしまうのです。会社では、少子高齢化やら2000年代前半の電機業界のリストラやらで、社員の年齢分布が極端に上に寄っている状態でした。年功序列の残り火とも相まって、課長の人数の割に課長の仕事の絶対量はそこまでありませんでした。だから上の立場のはずの人間が現場作業をするのです。これはその課長さんが悪いとかの問題ではなく、会社の構造問題です。

ただ、人に相談してみるとこの手の状況は良くあることでした。実際、あちこちのビジネス書やWeb記事では「できる社員はそれでも主体的に考えて仕事をする」とも言われています。もちろん会社に居続けるのであれば、この程度の逆境にはめげずに主体的に考え続けないと成長しないでしょう。しかし自分の場合はこの時点で既に起業を見据えており、「主体的に考えて動く」ことは会社の外でやるようになっていました。

===大組織の限界?======

2014年7月に入ると昼は会社で仕事、夜は起業活動という日々になりました。そして、その活動を通じてベンチャーや起業のスピード感は大企業のものとはまるで違うことが身に染みて分かるようになりました。でも、この差はどこから….?

そこで、昼間の会社の業務を見直してみます。まず、説明資料の完成度を上げるためにとてつもない時間をかける例がよくありました。上の上を説得するための資料なので、上司と部下の間で何度もダメ出しと訂正を繰り返していました。その他にも目標管理、計画策定、上へのアピールなど、社内の人間を説得することにかなりの労力が使われていました。すると「社内政治」が発生することも致し方ないのですが、今度はやたらネガティブな人間が現れ、会議時間の半分以上を社内の人間の悪口に充てるという状況も起きていました。

オーバーヘッドが・・・無茶苦茶大きいです。最近はカーツワイルだのシンギュラリティーだの加速的進歩だのという話がありますが、こんなペースで仕事をしていたのでは、全く話になりません。しかもこの状況、「日本だから」というわけでもないようです。例えば”pros and cons of working for big company”(大企業で働くことのメリット・デメリット)で検索すると見えてきますが、海外でもほとんど状況は同じです。これは全世界どこでもある「大組織病」という課題でしょう。

一方で、起業やスタートアップの場合は、既に賛同している人間が集まっているので、説得はそもそも必要ありません。そのフェーズは起業前の人集め、ピッチプレゼンや説明で終了しています。そしてこの差は機動力にもろ跳ね返ってきます。人集め一つとっても、従来型(大)企業の場合は人材プールが社内に限られるのに対して、スタートアップはネットを通じて全世界です。自分が居た会社ではグループ全体で20万人でしたが、それに対して日本の人口は1.2億以上、世界の人口は70億です。どちらの人材プールの方が大きくて人を集めやすいか一目瞭然です。もちろん、大企業の中で人を集める方が、人材の質がある程度担保されるというメリットはあります。しかし、なんだかんだ言って社会全体が高学歴化しており、「人材の質」に関しても大企業による担保のメリットは薄れています。

そして結論に至りました。

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「自分は中間管理職は目指さない」

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まだ駆け出しですが、AnimeScience Studio & Laboratory(※2015.10.23に「インテグリカルチャー(株)として法人化」)、サイエンスCGサービス「SCIGRA」、そしてまだ少し時間がかかりますが、バイオベンチャー「SHOJINMEAT PROJECT」をよろしくお願い致します。

http://scigra.com
http://shojinmeat.com
http://integriculture.co