研究者はアートにお金をかけるべきか?

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研究成果の社会還元だとか言われる中、その手段として重要なアートやデザイン的な側面について個人的に思うことを。。。。

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「研究成果の社会還元」の掛け声の下、研究者はその成果を伝える、いわゆるアウトリーチ活動の必要性に迫られています。特に大型研究予算では、その一部をアウトリーチ活動に充てるよう義務化づけられる例もあります。

でもどうせやるならば、芸術やデザインなどのアート面を充実させてかっこよくやりたいところです。社会の目を引けば研究者としての知名度が上がり、将来にもつながります。

そこでアーティストと組めば、アート面も厚い効果的なアウトリーチ活動ができます。SCIGRAでのサイエンスCG事業はこの文脈の中にあります。

でもそれにはお金がかかり、「アートのためにそんなにお金をかける意味あるの…?」という疑問が出てきます。「そんな金あるなら研究に使え!」という怒号も聞こえてきそうです。

一方で海外、特にアメリカの研究所はアート的なことも凝っていてかっこいいという声を聞きます。実際にMITやハーバードなどの一流大学では、アウトリーチ部門に専任のアーティストがいます。

参考: SCIGRAブログ:「CGとツイッターのフォロワー数」

というのも、研究成果をしっかりアピールしないと次がありません。これは日本も同じですが、ことにアメリカではアート面でも抜きん出ていないと、研究成果のアピール競争に敗れてしまいます。こうしてアメリカの研究アウトリーチ活動のアート面の水準は、国全体で高くなっています。

さて、先ほども書いたようにアートにもコストがかかります。でもお金をかけないと、研究成果のアピール合戦に負けて次が無くなります。つまり、A大学とB大学で予算を奪い合うだけのゼロサムゲームです。アメリカの大学や研究機関は、望まずともアピール合戦に引きずり込まれ、メインの研究開発よりもアートにより多くの予算を割かなければいけない状態は、最適と言えるのでしょうか・・・?

でもここに、「大学や研究機関の外の世界」という視点が加わると話が全く違ってきます。

確かに研究成果のアピール合戦により、アーティストを雇ったりして目先のコストは上昇します。大学や研究機関という「業界」の内部では予算の奪い合いのゼロサムゲームかもしれませんが、その「業界」全体、ひいてはアメリカ全体の情報発信力とオピニオンリーダーシップが高まっています。それが世界中から優秀な人材を惹きつけていることは言わずもがなです。

例えばサイエンスアーティストをたくさん雇って盛大に研究成果をアピールしているMITは、Twitterのフォロワー数は46万です。対して東大は2万、英語アカウントに至っては2000です。もちろんTwitterのフォロワー数がすべてではありませんが、世界で東大とMITでどっちが情報発信力があるかと言われれば、誰が見てもMITが上です。

MIT

現状、日本国内では「アートなんかに使う金あるなら研究に使え!」という怒号が飛んできたり、研究成果アピールでのアート面の水準はあまり高いとは言えません。確かにアートにお金をかけなくても、国内での成果アピール競争には勝てます。でもこのままでは大学や研究機関という「業界」全体と日本の研究成果発信力が低いままです。

まとめると、アートにお金をかけて研究成果のアピール合戦をすることは、「A大学vs.B大学」といった視点ではゼロサムゲームですが、日本の各大学の対外発信力といった「外の視点」を加えれば、別の景色が見えてくると思います。

SCIGRAでは学生や研究者自身の研究表現力を上げる「サイエンスCG塾」や、専門的な内容を視覚化するサイエンスCG制作をやってますが、これが日本の大学や研究機関全体の成果発信力向上の助けになればいいなと思います。

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