ビタミン剤などから自作した培養液でニワトリ心臓細胞を培養してみた件

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タイトル通りです。細胞培養液を自宅で作ってみました。

一般家庭での純肉を育てたり「デザイナーミート」を作れるようになるには、そもそもの原料である細胞培養液を個人でも調達できるようにする必要があります。

過去の実験では、FBS代替として卵黄0.05%を使い、抗生剤&抗カビ剤として卵白を使うことでを自宅で細胞培養をしました。基礎培地についても、グリーンダカラで6割まで割ることができました。でも残り4割を占めるDMEMは、一般人では買えません。そこでDMEMも自作できないかと考えました。

試薬メーカーのSigma AldrichがDMEMの中身を公表しています。
https://www.sigmaaldrich.com/life-science/cell-culture/learning-center/media-formulations/dme.html

色々な成分が並んでいますが、DMEMの主成分は大きく分けて4種類です:
1.無機塩(塩、重曹、塩化カルシウムなど)
2.ブドウ糖
3.アミノ酸(20種類のアミノ酸)
4.ビタミン類(水溶性ビタミン、ビタミンB群)

ざっと30種類ぐらいの「栄養」が入っていますが、細胞の成長は一番足りない栄養に合わさってしまいます。「リービッヒの最小律」というやつです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%83%E3%83%92%E3%81%AE%E6%9C%80%E5%B0%8F%E5%BE%8B

さて、これらをどうやって調達するかです。色々調べてみたところ、こうなりました。

アミノ酸
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B0192JVGIY/ref=oh_aui_detailpage_o01_s00?ie=UTF8&psc=1
ブドウ糖
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B016XPHV5M/ref=oh_aui_detailpage_o02_s00?ie=UTF8&psc=1
ビタミン類
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B000V2FF5M/ref=oh_aui_detailpage_o02_s00?ie=UTF8&psc=1

ここで成分表を見て、何がどのぐらい入っているのかを確認してみます。

これと先のSigma AldrichのDMEMの中身を見比べて、何が足りて何が足りてないかをまとめた表がこちらです。

アミノ酸

ビタミンB群

DMEMと比べると、マルチアミノ酸錠剤ではシステインが入っていない(?)こと、グルタミンとイソロイシンが大きく足りていないことが分かります。これで実験してみて何かが発生したら、これら3種のアミノ酸をどこかで調達して足してみようと思います。これらの錠剤の原料となっている「混ぜこぜアミノ酸」がどこかで売られていれば、それが一番安いんじゃないかと思います。多分砂糖を原料に大きなタンクで酵母を培養し、その酵母をまたまた大きなタンクで分解とかして作られていると思います。

ビタミン類については、塩化コリン(ビタミンB4)と葉酸(ビタミンB9)が不足しているようです。また、錠剤には麦芽糖とか色々他にも入っていて、その中に細胞にとって害になるものが入っている可能性もありますが…試してみないと分かりません。

無機塩について、食塩と重曹は家庭用の物を使いました。残りはひとまず試薬グレードを使いました。

何をどのぐらいの量入れるかになると、アミノ酸、食塩、ブドウ糖のようにたくさんいるものと、ビタミン類のように少量しかいらない物があります。少量しかいらないものについては、計測誤差を減らすために20倍溶液を作り、それを薄めることにしました。

ビーカーに水道水と攪拌棒を入れ、400rpm、30℃ぐらいで攪拌開始、そこに「たくさんいるもの」であるマルチアミノ酸錠とブドウ糖と食塩・重曹を入れました。アミノ酸錠は15分ほどで大体溶け、白く濁った溶液になりました。

もう一つのビーカーにも同じようにし、ただしこれには「少量しかいらないもの」を20倍の濃度で入れました。ビタミン剤は意外によく溶け、溶液はかなり黄色くなりました。

次に両方ともろ紙で濾過して、19:1の割合で混ぜました。一回の濾過ではまだ濁っていたので、もう一回濾過したら薄い黄色の液体になりました。

そしてこれをFabCafeTokyo(渋谷、https://fabcafe.com/tokyo/ )に持って行き、Shojinmeat Project #科学コミュニケーション #研究 の人に渡し、そのまま細胞培養に使ってもらうことに…

結果から言うと鶏の心臓細胞の初代培養ができたそうですが、細胞培養実験の詳細はもっと結果がまとまったら別エントリーで紹介します。

 

今回の実験では無機塩の一部で試薬を使いましたが、理想的には一般人も入手可能な食品グレードですべて置き換える必要があります。そこでamazonとモノタロウを調べたところ、リン酸二水素ナトリウムと硝酸鉄以外は全部個人でも買えるみたいです。

硫酸マグネシウム(入浴剤、エプソムソルト)
https://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_noss?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&url=search-alias%3Daps&field-keywords=%E7%A1%AB%E9%85%B8%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%83%8D%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0
塩化カリウム(融雪剤)
https://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_noss?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&url=search-alias%3Daps&field-keywords=%E5%A1%A9%E5%8C%96%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%A0&rh=i%3Aaps%2Ck%3A%E5%A1%A9%E5%8C%96%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%A0
塩化カルシウム(食品添加物グレード)
https://www.amazon.co.jp/%E9%A3%9F%E5%93%81%E6%B7%BB%E5%8A%A0%E7%89%A9-%E5%A1%A9%E5%8C%96%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0500g-%E9%A3%9F%E5%93%81%E6%B7%BB%E5%8A%A0%E7%89%A9-%E6%9D%BE%E8%91%89%E8%96%AC%E5%93%81/dp/B00NHEP7WM/ref=sr_1_7?ie=UTF8&qid=1517747956&sr=8-7&keywords=%E5%A1%A9%E5%8C%96%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0

リン酸二水素ナトリウムはリン酸と重曹から合成できます。リン酸(食品添加物グレード)は
https://www.amazon.co.jp/MATSUBA-85-%E3%83%AA%E3%83%B3%E9%85%B8%E3%80%90%E9%A3%9F%E5%93%81%E6%B7%BB%E5%8A%A0%E7%89%A9%E3%80%91/dp/B071JDSJBC/ref=sr_1_1?s=food-beverage&ie=UTF8&qid=1517748041&sr=1-1&keywords=%E3%83%AA%E3%83%B3%E9%85%B8
で買えます。この二つを正しい比率(リン酸2モルに対して重曹1モル、高校の化学です!)で混ぜればリン酸二水素ナトリウムの出来上がりです。

硝酸鉄は・・・そもそも必要量がごく微量だし、塩化鉄でOKじゃないかという気もしてます。次の実験で試してみようと思います。
https://www.monotaro.com/g/01278495/?t.q=%89%96%89%BB%93S

 

ちなみにうちの自宅ラボは和室にあります。