“Movie Science”という言葉があります。
これは「映画あるある」的な、良く言って不正確、悪く言えば荒唐無稽な物理現象やガジェットのことを言います。「宇宙で爆発音」とか、「1億年前のDNAで恐竜が復活」とか、「ワープドライブ」などを指します。
映画である以上、科学的な正確さよりも演出や迫力が優先されるのは当然ですが・・・ それにしてもこれはひどい、という文脈で”Movie Science”という言葉が使われます。特に、「宇宙で爆発音」や「レーザーをよける」などのあからさまなものは、”Movie Physics”(映画の世界の物理法則)と呼ばれ、よくネタにされます。
それでも、荒唐無稽な”Movie Science”やSFが遠い未来のビジョンを示し、先端研究の方向を決める例は、スミソニアン学術協会をはじめ大勢の有識者が指摘しています。
さらにはSFを文学で終わらせず、本当に実行してイノベーションを起こす「行動派SFオタク」の科学者や起業家がいます。古い例ではジュール・ヴェルヌの「月世界旅行」からの宇宙ロケット、最近ではスタートレックに出てきたガジェットからのタブレットPC、SF小説「ニューロマンサー」からの代替現実(MMORPG)など、色々な事例があります。
このようにアメリカが”Movie Science”によって100年先まで見越したイノベーションを仕掛ける中、日本はどうなのでしょうか・・・・
アメリカには”Movie Science”がありますが、日本にも”Anime Science”があります!
フルダイブVRMMORPG、ニューロリンカー、電脳ゴーストハック、美少女型PC、シビュラシステム・・・・・ そういえば鉄腕アトムでロボット技術者になった人が大勢いたり、“Anime Science”は新しい話でもないです。
そして、”Anime Science”は”Movie Science”とはまた違ったビジョンを示せると思います。
よく言われる例がロボットです。”Movie Science”のロボットは日常生活には溶け込めていません。かなりの確率で狂うか悪役になるか、もしくは遠い銀河の話や子供向け作品に限られてしまいます。対して”Anime Science”のロボットは、鉄腕アトムやドラえもんはともかく、イヴの時間、ちょびっツ、うたプリ、日常、ミス・モノクローム・・・ どの作品でも自然に、時には明るく楽しく溶け込んでいます。
「フィルム・ノワール」と、そこから派生した「テク・ノワール」の流れかもしれませんが、”Movie Science”のSFはダークな描写が目立ちます。そのせいかノワール系の描写が多い、AKIRA、カウボーイビバップや攻殻のような作品は、国内より欧米圏で評価が高かったりします。
対して“Anime Science”のSFは、明るめの描写が目立ちます。マクロスFなんて常にバジュラの襲撃に怯える逃げ場のない宇宙移民船とか、いくらでもダークで絶望的な描写はできます。でも、それでもかなり明るく描かれています。(そもそもマクロスFがSFなのかという議論はさておき)
より良い未来のビジョンを社会に示すことは、研究者や起業家の重要な役目とも言われます。では、そのビジョンを示すのにSFを引き合いに出すのならば、実は”Anime Science”の方が向いているかもしれません。