肉食のフレンズ用もあるジャパリまんの中身について、#けもフレ考察班を中心に色々語られています。
実は家畜がいるとか、無人の工場がとか、フレンズになり損ねた動物がとか、ジャパリパークから人間が消えたのは実は・・・とか、
その中でも有力なのが、「ジャパリまん純粋培養肉説」です。
そこでにわとり細胞を抽出して自宅で培養して「純肉ジャパリまん」を作り、動画にしてニコニコ超会議1日目の「研究してみたマッドネス」でも発表しました。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm31128724
http://www.nicovideo.jp/watch/sm31104033
動画は速報性重視だったり、発表も制限時間3分だったので、ここで改めて手順紹介します。
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純肉ジャパリまんを作るには、中身の純肉と外側のジャパリまんが必要です。外側は池袋のニコニコ本社でのコラボカフェで(3時間並んで)入手しました。Nicocafeには10:50到着しましたが、平日(水曜日)なのにすでに20組強が中にいて、自分の順番は60番台でした。
純肉培養には、事前準備として細胞を抽出する必要があるので、そこから紹介します。
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■細胞の入手
まずは以下の物を用意します。
・有精卵 1個50円前後 例えばここ⇒ http://yamagishi-store.com/category-5/
・ふ卵器 1台1万円から amazonにあり
・解剖セット 5000円前後から。メスだけなら使い捨て700円も。
・コラゲナーゼ(200IU/ml) ※バイオ試薬なので個人で買える・・・?⇒入手方法調査中
溶液でなく単体で売られている場合は、1mg 230IUなので10xなら100mgを10ml PBS(-)に溶かす
http://catalog.takara-bio.co.jp/product/basic_info.php?unitid=U100007728
・冷温庫 (35℃ぐらいを1時間保てれば良いので、鍋と温度計でもOK)
・PBS (生理食塩水でもOK)
・遠心分離機 手動式の物が3万円程度から
https://www.monotaro.com/g/00255821/?t.q=%89%93%90S%95%AA%97%A3%8B%40
以下は、抽出細胞を長期保存したい場合に必要ですが、一般家庭で用意できるかは微妙です。
・-80℃冷凍庫 -60℃冷凍庫でもギリOKですが、20万円ぐらいします。
・細胞保存液 ※バイオ試薬なので個人で買える・・・?⇒入手方法調査中
抽出した細胞を長期保存したい場合に使います。
あとすべての手順に共通ですが、こまめに70%アルコールときりふきで物や手を殺菌しておくのも重要です。
■細胞の抽出
有精卵を孵卵器で12日間かえします。孵卵器の底に水を入れて準備完
了、あとは孵卵器が有精卵を適度に転がしながら39℃を維持します。8日でも10日でも細胞を回収できるぐらいには胚発生しますが、12日の方が細胞が回収しやすいです。
12日齢の卵の中身はこんな感じになります。
これを解剖して、「肝臓」とか「心臓」とか、部位ごとの細胞を取り出すわけですが…グロいので苦手な人もいるかと思います。あと、それなりに指先の器用さと経験と技術が要ります。残念ながら自分はその技術や経験を持ち合わせていないので、細胞抽出はShojinmeat Projectの技術コアのDr.IKKOがやりました。(https://www.shojinmeat.com/about_us )
欲しい部位を取り出したら、これをメスで切り刻み、コラゲナーゼ(1%溶液)に浸して、35℃の環境に1時間ほど置きます。細胞は臓器やスジといった「足場」に絡みついていますが、コラゲナーゼは細胞を足場から引きはがします。
1時間たったら細胞を遠心分離して上清のコラゲナーゼ溶液を捨てます。こうして抽出した細胞はタネ細胞として、細胞保存液に入れて-80℃冷凍庫に保存することもできるし、培養液に入れてそのまま純肉培養に回すこともできます。
ただ、正直のところ一般家庭で-80℃冷凍庫は無茶だと思うので、抽出したタネ細胞はそのまま純肉培養に使うことになるかと思います。
細胞は抽出してしまえば、培養方法次第でいくらでも増やせます。つまりタネ細胞ストックを切らさない限り、半永久的に細胞を入手できるようになります。将来的にはShojinmeat Projectから抽出細胞を買えるようにすることも考えられます。
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■純肉培養
まずは以下の物を用意します。
増やしたい細胞(上の手順で抽出した細胞、もしくはどこからか入手した細胞です。)
使い捨てスポイト
DMEM基礎培地 ※バイオ試薬なので個人で買える・・・?⇒入手方法調査中
しみこんにゃく
卵白
卵黄
CO2インキュベーター 普通に買ったら80万円するので、こういう簡易品使った
https://www.monotaro.com/p/6096/9282/?displayId=4
DIYの事例もあります http://qiita.com/earthlyworld/items/aa7c2a17aa0a05cefc06
まず、培養液を用意します。実験室ではDMEM 90%+牛胎児血清(FBS)10%+抗生物質1%という培養液が使われますが、家庭でやるには値段が高すぎるしオーバースペックです。
そこで家庭用ではDMEM基礎培地に卵黄0.1%、卵白5%を溶かして培養液を作ります。
卵黄には細胞増殖因子が含まれており、これがFBSの役割を果たします。
卵白には卵白リゾチームという成分が含まれており、これが強力な抗菌・抗カビ剤になっています。これにより、抗生物質が要らないのはともかく、クリーンベンチも不要になり、「家庭で細胞培養」が可能になるわけです。ちなみに卵白無しで家庭で細胞培養しようとしても、ほぼ確実にこうなります。
だって温度38℃湿度100%なんて環境、普通に考えたらカビます。
DMEM基礎培地は、無茶な金額ではありませんが500mlで1000円前後と割高です。そこでケチりたければpHと浸透圧を調整したGreenDakaraで6割までなら割れます。
(GreenDakara500mlに重曹1.8g、1M NaOH 5ml、水50mlを入れて調製します)
やらなくてもいいかもしれませんが、次に凍みこんにゃくをチンして滅菌します。滅菌したら、この上にスポイトで細胞と培養液2mlをかけてふたをします。今回はにわとりの筋肉部位から抽出した細胞を使いました。と筋肉細胞、筋芽細胞、脂肪細胞、線維芽細胞、筋肉衛星細胞、その他幹細胞が色々混ざっていると思いますが、どれも食用可です。
ふたをしたら、温度36℃±3℃、湿度100%(努力目標)、CO2濃度5%の環境が保たれているCO2インキュベーターに10日ほど置きます。すると抽出した鶏の細胞が増殖していきます。
培養液には糖分やアミノ酸など、「細胞のごはん」が含まれています。これらの養分を細胞が消費していき、「排泄物」として乳酸などが排出されます。すると培養液は酸性に傾き、フェノールレッドのピンク色がオレンジ色に変わります。つまり、培養液がオレンジ色に変わったら交換のタイミングです。細胞にあたらしいごはんをあげましょう。
CO2インキュベーターについて、今回使ったものは恒温槽の中にタッパーウェアのようなものが入っており、その中でCO2を放出するカイロのようなもの(商品名「カルチャーパル」)を使ってCO2濃度を維持する構造になっています。ただ、これ自体が6万円ぐらいしてちょっと高いので、ドリンク用の冷温庫とビール用CO2ボンベを使って、2万円ぐらいで作る計画も進行しています。http://qiita.com/earthlyworld/items/aa7c2a17aa0a05cefc06
今回は細胞観察のために、それなりの値段のする専用の35mm培養皿を使いましたが、とにかく細胞を培養するだけならしみこんにゃく細胞足場の上で増えているので普通の皿でOKです。
途中経過、5日目で観察したらこんな感じでした。しっかり細胞が増えてます。
10日目もこんな感じ。がっつりです。細胞が増えて塊になって半分組織化した部分は黄色っぽいブヨブヨを作り、肉眼で見ても分かる変化がおきていました。
というわけで、10日目でこの「肉」と言えなくもない凍みこんにゃく純粋培養にわとり細胞複合体を培養液から取り出し、培養液を洗い流してから調理します。グレープオイルと塩で調理しました。
そして元のジャパリまんに入っていた中身を取り出して、に先ほど料理した「肉」を入れます。ここに、世界初の「自家製純肉ジャパリまん」が完成ですヽ(・∀・)ノ
今回は「自宅で細胞培養」の実証のため、少ない規模での細胞培養しかしていませんでした。でも培養液からFBSやら成長因子やら高くて入手困難な成分を除去できたおかげで、今後はもっと大規模にやれる算段もできました。とりあえず、この規模(50~100g?)でやることは全く問題ありません。
細胞培養手順については「ニコニコ技術部なまものづくり」として、細胞培養講座を企画しています! 希望者が10名集まったら実施しようと思います。
http://twipla.jp/events/255058