OTAKUと宗教(4)

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(旧個人ブログ、http://yukihanyu.exblog.jp/24466443/ より移動)

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世界に広まったアキバカルチャーは各国で「宗教」とどう付き合っているのか、世界のOTAKUたちはアキバカルチャーと信仰/宗教の折り合いをどうつけているのか、第1回では、コスプレとイスラム教の両立をはかるインドネシアのムスリムコスプレイヤー、第2回ではアメリカの福音派クリスチャンOTAKUのアニメ観、第3回ではアニメブロガーの宗教観の統計を紹介しました。

第4回はアニメブロガーへの「聞き込み調査」結果を紹介します。

第1回 第2回 第3回

これまでと同じく、ざっくり意訳で紹介していきます。

以下訳文
ソース:http://beneaththetangles.com/2011/02/23/anime-and-religion-survey-spirituality-in-anime/

Anime and Religion Survey: Spirituality in Anime
「アニメと宗教」調査:スピリチュアリティーとアニメ
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人を改宗させる目的のアニメは無いため、アニメで宗教が前面に出ることは通常ありません。宗教的なものが出てきたとしても、それは(エヴァのように)ストーリーや世界観のために「曲げられて」使われるだけです。それでも、「宗教」は文化に深く入り込んでおり、それはアニメでも見ることができます。

今回は「アニメと信仰」にまつわる4つの質問を紹介します。

・アニメで西洋の宗教的なものが使われることについてどう思いますか
・その手のアニメでは何が一番好きですか?
・アニメを見ることにより「日本の信仰」を、より好きになりましたか?
・あなたにとって、アニメや漫画が「日本の信仰」についての主な情報源ですか?

たとえ薄くとも、宗教的な描写はアニメの中にもあります。せりふにカミ(神)の言及はあるし、食事の前のお祈り(「いただきます」のこと)は出てくるし、初詣も描かれています。そんな描写からは、神道と仏教の世界を垣間見ることができます。実際、36%のアニメブロガーは、「日本の信仰」についての理解はアニメが情報源であると回答しています。そして半数が「日本の信仰」をアニメで見て親近感を感じたと答えています。知ることにより好きになる人は多いようです。

宗教の描写があるアニメでどれが好きかという質問もしました。もちろんこのカテゴリーに入るすべての作品を挙げることはできず、キリスト教の描写がある作品でも、サムライチャンプルーや灰羽連盟のようなビッグタイトルすらいくつか落ちています。以下の作品について、質問をしました。

・クロノクルセイド ・地球少女アルジュナ
・ヘルシング ・マリア様がみてる
・エヴァンゲリオン ・1ポンドの福音
・おとめ妖怪ざくろ ・Serial Experiments Lain
・千と千尋の神隠し ・とある魔術の禁書目録
・トリニティ・ブラッド

「アルジュナ」以外、すべての作品について回答が得られました。予想通りエヴァが27%首位で、次いでアカデミー賞を受賞した「千と千尋」が25%と続き、両方で過半数の票を獲得しました。Lain、マリア様とヘルシングがそれぞれ10%の票を集めました。

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以下、アニメブロガーの信仰別の結果です。

どうも、信仰を持つ人は持たない人よりも宗教的描写を好んでいるようです。ただ、もとより「エヴァ」と「千と千尋」だけで過半数なため、あまり正確な結果ではないかもしれません。

「エヴァ」がまさに宗教的描写のあるアニメです。アニメで西洋の宗教の描写があることについて、「好むとしたのは20%程度なのにもかかわらず、エヴァは人気です。アニメでの西洋宗教の描写について、2/3が「特に気にしない」、15%が「見たくない」という返答でした。

この結果からは、どうも2つのことが言えそうです。まず、宗教的描写があっても、作品が面白ければ他の信仰の人も十分楽しんでいること、そしてもっと重要なのは、特定の宗教に関しての知識がより多ければ、その宗教に対して違和感を抱かせるような誤解を取り払えることです。かなりの数のアニメブロガーが、日本の信仰について知ることにより、親近感を抱いています。これは、信仰を持たないアニメブロガーがキリスト教やイスラム教について、より多く知る場合も、同じことが起きるのではないでしょうか。

次は、アニメブロガーのキリスト教に対する意見です。

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以下、次のブログエントリーになります。こちらのエントリーに関しては、もはやアニメは関係ない気もしますが… アニメブロガーたちはどんな人たちで、どんな宗教観を持っているのかがよく表れていると思います。

http://beneaththetangles.com/2011/02/24/anime-and-religion-survey-anibloggers-and-christianity/
Anime and Religion Survey: Anibloggers and Christianity
「アニメと宗教」調査:アニメブロガーとキリスト教
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自分(TWWK氏)はアニメや漫画に登場する全ての宗教的描写について調べていますが、特にキリスト教について着目しています。自分自身がクリスチャンなので、ほかのアニメブロガーがどう考えているのかにも興味があります。回答者のうちの1/4がクリスチャンでした。この比率は全米平均や全世界平均を下回っています。

質問:
・神についてどう思いますか?
・キリスト教の教義についてどのぐらい知っていますか?
・キリスト教の教義について、一言で言うと?
・アメリカのクリスチャンを一言で言うと?
・キリスト教の「神」を一言で言うと?
・イエス・キリストを一言で言うと?
・聖書を一言で言うと?
・クリスチャンのイメージ改善には、どうすればいいでしょうか?
・科学はキリスト教の信仰と共存できると思いますか?
・科学はキリスト教で言うところの「神」の存在を否定したのでしょうか。
・科学は「神」の存在を否定したのでしょうか?
・「(物理法則を破るような)奇跡」はあり得ますか?
・「奇跡」を見たことがありますか?
・進化論を信じますか?

アニメブロガーから見たキリスト教

回答者のうち2/3が、キリスト教の教義についてよく、もしくはある程度知っていると答えました。このあたりの結果はクリスチャンにとって重要です。キリスト教についてあまり知らないと答えた人は、アメリカ国外に多かったですが、アメリカ国内からも無視できない数いました。

「キリスト教の教義について、一言で言うと?」という質問について、もちろん世界的な信仰を一言で片づけるのはかなり無理がありますが、私が言うならば「神の子であるイエスキリストは、我々の罪を背負って十字架につけられるように遣わされ、キリストの犠牲によって、我々は精霊と神への愛、そして相互愛に満ちた生を授かった。」と答えます。

他の回答も類似するものです。

「隣人を愛せ」
「イエスは我々の罪を背負って死ぬことにより、人々に永遠の生を与えた」
「人は罪深い、神は慈悲深い、イエスは救済する」
「神がすべてを作り、人は罪深く、神は子であるイエスを地に遣わし、人の罪の犠牲とした」
「ヨナ書3の16」
「人は罪深く、神には届かないが、神の慈悲とキリストの犠牲により、主を信じる者は救われる」

信仰の実践に対するネガティブな回答もありました。

「質問は「(2000年前の)本来のそのままのキリスト教」という意味でしょうか。それとも時代に合わせて都合よく再解釈されたキリスト教でしょうか?前者であれば、己の欲せざる所、人に施すこと勿れ、でしょうか。後者であれば…もっと邪悪な何かでしょう」
「教会は神の教えを2000年もの間にいいように曲げてきた。良いこともしているようだけど。」

一部の回答は知識不充分を挙げています。

「カトリックとかプロテスタントとか、宗派が多すぎてよくわからない。」
「・・・一言でとか、無理です。」
「一言で言えますか?ただ、キリスト教の目指すところは他の宗教とも同じでしょう。」
「人への愛とか何とか、意味不明な何か」
「天国に居場所を確保するために罪を避けること」
「チャリティーと愛と平和、いい人であるための何か」
「キリストは天からの啓示とか。。。すみません。よくわかりません。」

一部の回答、特に慈悲・愛・罰について、意見にかなりの隔たりがあるようです。慈悲は罪深きものであっても受けられる愛で、これは神がイエスを犠牲にすることにより人々に授けてくれたものです。これに対して、「所業」と「罰」にフォーカスした意見もありました。

「クリスチャンに関する形容詞」の質問について、クリスチャン自身からもネガティブな回答が見られました。トップ3は、「保守的」、「無知」、「偽善」でした。やはりクリスチャンはキリストの愛やらを説く前に、イメージを改善する必要があるようです。「無知」に関しては、科学に対する意見があるのでしょう(詳細後述)。ポジティブな回答としては、「チャリティー」、「温厚」、「敬虔」などがありました。

神?イエス?聖書?

・「神」を一言で言うと?という質問をしましたが、これは簡単ではありません。ただ、回答者の宗教観をよく表すと思います。以下が回答の例です。

・神は存在しない
・もし神が存在するならば、そいつは雲の上に座ってる腹黒い奴だ
・アラー以外の神なし
・複雑な問題に答えたり、人々の価値観を制御するために作られた架空の存在
・神はいると思うが、その姿は人間が勝手に想像したものだ
・TL;DR(「今北産業」、長すぎる)
・「神」の概念は個人やコミュニティーを助ける簡便なツールだ。みんながそれを信じている間は良いけれども、「神」は論理も常識も議論も通り越して「悪」が誰かを決めつけて、対話の道を閉ざすのにも使われる。
・もし神が存在するならば、一言で言えるようなものや、人間が理解できるものではないだろう。
・「神」とは宇宙を作った力だが、意思を持った何かではない。
・生そのもの
・創造者、救済者
・全て

この質問は、回答者がどうこたえるかを見るために、意図的に抽象的にしています。何らかの宗教を持つ人は、その宗教での神について答えています。宗教を持たない人からは、多種多様な意見が出ました。また、多くの人が回答しませんでした。

「キリスト教の神」については、思いのほかポジティブか中立的な回答でした。[全能(15%)、慈悲(14%)、慈愛(14%)] 続くいくつかは両方に取れる言葉でした。[“Judgemental”批判的/決めつけがましい(12%)、辛抱強い(9%)、執念深い(7%)、怒れる(6%)] どうも、クリスチャンをはじめ、信仰を持つ人に対して好意的な人は、「神」についても好意的なようです。信仰を持たない人も、クリスチャンたちの予想に反して、全員が宗教に対して批判的なわけではないようです。このあたりに対話の余地が見える印象を受けます。

イエスキリストに関する返答についても、いろいろありました。約半数が人間だと答え、「クリスチャンである」と答えた30人が聖なる存在としました。「キリスト教の神」とちがい、イエスキリストに関しては「”Judgemental”批判的/決めつけがましい」や「偽善」といった返答は見られませんでした。多くの人が、キリストは中東出身であるため白人ではなく、(イザヤの預言書にあるとおり)ハンサムでもなかっただろうと答えています。

回答の傾向として、「聖書」に関しては批判的な意見が相次ぎました。53人が「矛盾がある」と答え、真実だと答えたのは7人だけでした。つまり、クリスチャンの間でも聖書に整合性があると考えるのは、1/4だけです。聖書に対しては「おとぎ話」、「不正確」、「神の言葉」などの返答がある一方、「短編集」「詩集」「難読」、などの「分析的」な返答があり、真実かどうかはともかく「興味深い」という返事も多くみられました。

キリスト教=反科学?

クリスチャンは無知で思考放棄しているという意見が多くありました。これは科学的思考とキリスト教的神学の決裂のせいなのでしょうか。そうかもしれませんが、そこまで単純でもないようです。驚くことに、69%が科学とキリスト教は両立可能だと答えました。(ほか、18%が「わからない」、14%が「両立できない」) これは質問の仕方が悪かったのかもしれません。何でも「両立」はできます。「科学とキリスト教は同時に真実たりえるか?」の線で質問するべきだったと思います。回答者も、質問の意図は理解できたと思います。それは次の結果にも表れています。科学は「キリスト教の神」を否定したわけではないと、76%の回答者が考えており、「神」については82%がそう答えています。その反面、神の存在を示す科学的な証拠はないということにもなります。

さらに、物理法則を破るような「奇跡」についても質問しました。結果は50(はい)/42(いいえ)と割れました。そして、72%が見たことがない、14%が見たかもしれない、15%が見たことがあると答えました。

最後に創造論について尋ねました。科学界は「ニセ科学」と叫びますが、創造論に肯定的な学者もいます。アニメブロガーの間では86対6で「わからない」が16と、科学界と同じ意見が優勢です。一部のクリスチャンは創造論は真実で、神は「進化」というメカニズムも作ったと信じています。

ザ・アニメブロガー世代

アニメブロガーのバックグラウンドや信仰は多様ですが、全体的には若くて教育水準が高い傾向があります。「アニメブロガー」という集団は、「全米平均」と大きくずれているとは言えますが、まったく関係ないわけではありません。個人的見地ですが、教師をしていた経験と、15年以上の社会経験から、アニメブロガー世代は、アメリカの若くて意識の高い世代と似ているように感じます。もちろん地域差はありますが、そういう人たちはどこの高校や大学にもいると思います。

そんな人たちの多くは、宗教を通じたつながりは持っていません。実際、かなりの数は反宗教的です。変な未来予測かもしれませんが、あと20年もすればそんな人たちが世のスタンダードとなるのではないでしょうか。宗教にしがみつく方が「変人」で、信仰を持つと答える人が少数派で、宗教の存在感が今よりもずっと薄い世界です。もしそうならば、アニメブロガーたちはその先端を走っていることになります。アメリカはヨーロッパ化するのです。

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以上、訳文でした。

もはやアニメ関係ないんじゃないの…とも思う一方、アニメブロガーのOTAKUたちは「アキバカルチャーと信仰の折り合いをつける」以前に、そもそも信仰を持っている割合が社会全体の平均よりも低い、ということが見えてきます。