インディー・バイオベンチャー(2) Hack-Make-Bio

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前回「インディー・バイオベンチャーの流れが来ている」としましたが、これはもっと大きな流れの一部じゃないかなと思います。

それは、ハッカースペースから始まり、それがメイカースペースへ広がり、さらにバイオスペースに至るという流れです。ハッカースペースからはITスタートアップサイクルが生まれ、メイカースペースからはハードウェアスタートアップサイクルが生まれつつあります。次はバイオスペースの番だと思います。

そもそもの始まりの「ハッカースペース」とは何でしょうか。

 

◇ハッカースペース
ハッカースペースとは、コンピューターの愛好家が集まって一緒にプログラミングやゲーム作りをしていた場所です。ハッカースペースは90年代の半ばに現れ、その目的は主に趣味や自己表現でした。つまりハッカースペースに集まっていたのは、アーティストやデザイナーの類でもあったわけです。また、ハッカースペースは単なる場所ではなく、コミュニティーのことを指すようになります。

ハッカースペースがコミュニティーとして安定してくると、今度はアートやデザインでは自己満足で終わるだけだ、個人的な趣味で終わらせたくないと思う人が出てきます。そういう人たちは、ハッカースペースで仲間を募り、起業しました。いわゆる「ITスタートアップ」です。

そして成功したITスタートアップからVCやエンジェル投資家が生まれ、彼らがハッカースペース(ハッカーコミュニティー)から次のITスタートアップを見つけて育てる、というサイクルが回るようになりました。場合によっては、#HiveShibuya http://www.hiveshibuya.co/ のように、VC自身がハッカースペースを「コワーキングスペース」や「インキュベーション施設」の名で提供するようになりました。こうして今のITスタートアップ界隈はできあがりました。

 

◇メイカースペース
ハッカースペースから「ITスタートアップサイクル」が生まれる中、一部の住人たちはプログラミングだけでは限界があると感じました。やっぱり実体のある物を操作したいと感じるようになります。そこで電子工作やハードウェア設計と試作に手を広げます。そのため工作機器や3Dプリンターも導入しました。特に、3Dプリンターが特許失効や技術発展で手の届くものになった2010年手前ごろから、この流れは加速していきます。

すると、プログラマーやコンピューター愛好家が中心だったハッカースペースに、日曜大工、DIY、工芸が好きな人たちや、アイディアを持った人たちが集まるようになりました。こうしてメイカースペースが生まれます。日本ではファブラボ http://fablabjapan.org/ 、アメリカではTechShop http://www.techshop.ws/ とかが有名です。

メイカースペースもハッカースペースと同じく、当初は趣味で活動する人やアーティスト・デザイナーが中心でしたが、そこから起業する人も現れるようになりました。インディーズの製造業、いわゆる「ハードウェアスタートアップ」です。実際どんな人たちなのかは、Maker Faire Tokyo http://makezine.jp/ とかに行けば会えます!

この流れ、ハッカースペースから「ITスタートアップサイクル」が生まれた経緯と似ています、というか同じです。ハードウェアスタートアップサイクルはまだ一周目で、日本ではまだ成功者はわずかです。しかしそのうち、成功したハードウェアスタートアップがVCやエンジェルとなり、次のハードウェアスタートアップを育てるようになります。ハッカースペースの時と同じく、ハードウェアスタートアップのインキュベーション施設ができたりします。秋葉原のDMM.make AKIBA https://akiba.dmm-make.com/ はまさにこれです。とにかくハードウェアスタートアップサイクルが回り始めるのです。

 

◇バイオスペース
メイカースペースでものづくりをしている人の中には、「生もの」を使いたいという人もいます。でも、生き物や生ものはプレス機や旋盤では加工できません。インキュベーター、クリーンベンチ、培養皿、培養液など、化学・バイオ関連の各種試薬が必要です。

というわけで、これらの物品を揃えることで、メイカースペースからバイオスペースが生まれます。日本国内でも、メイカースペースが「生もの」を扱えるように機能拡張することで、バイオスペースを作る動きがあります。 http://fablabjapan.org/2015/09/10/post-6085/ 山口では「YCAMバイオラボ」 https://mtrl.net/blog/howtomakebiolab3/ というバイオスペースができています。また、これらをつなぐバイオクラブ http://www.bioclub.org/ というコミュニティーができています。

日本のバイオスペースはまだ「バイオアート」に取り組むアーティストやデザイナーが活動する段階ですが、アメリカはやや先行しており、IndieBio http://sf.indiebio.co/ や Counter Culture Labs https://counterculturelabs.org/ などのバイオスペースからスタートアップが立ち上がっています。特に、IndieBioは出資も行うなど、スタートアップのインキュベーション施設の様子も見せており、3億円を調達したMemphis Meats社 http://www.memphismeats.com/ が生まれています。当人が意識しているかどうかはわかりませんが、日本でこのポジションに一番近いのは(株)リバネス https://lne.st/ です。

そして、そんなバイオスペースから飛び出してくるスタートアップこそが、「インディー・バイオベンチャー」です。

これまでの話、図にまとめるとこんな感じです。

ブログ用図

とはいえ、本場のアメリカでも、まだバイオスペースや「インディー・バイオベンチャー」は本格化してないようです。でもこのあと何が起きるかは、ハッカースペース、メイカースペースの先例から自明だと思います。