インディー・バイオベンチャー(4) 必要パーツリスト

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人工培養肉の”Shojinmeat Project”と、サイエンスCGの”SCIGRA”を運営している、うちの「インテグリカルチャー(株)」は、企業や大学の後ろ盾無しでやりくりしている「インディー・バイオベンチャー」です。

世の中にはいろんなベンチャーがあって、EC系や、IT系、大学発や大企業のスピンオフもあります。その中で、うちが欲しかったもの、役に立ったもの、そうでなかったものを、手短にまとめてみようと思います。色々なベンチャーがある中、「インディー・バイオベンチャー」はこんなものが欲しいのか、ぐらいで意識してくれると嬉しいです。

 

とりあえず今のうちの状況です。

2015/10/23創業、資本金は「おいしいばいよーにく」円の1,481,429円です。(銀行的な基準では、資本金は300万円欲しいそうです。) この金額でスタートする中、SCIGRAは広告手段に乏しく、案件取れてないのでまだ赤字です。(黒字化のめどが立っているのが救いですが) Shojinmeatはメンバーが各自の自己資金で研究開発を続けています。

7月からは(株)リバネスにて整った環境での本格研究開発が始められることになりました。でもそうなると、試薬や細胞の費用がかかるようになるので、資金調達がより重要になります。

そこでVCやエンジェルが言う意味での「信用」(※前回参照)を得るために、技術と事業計画を磨いているところです。(事業計画は正直助けが欲しいところですが、下の方で触れます。)

その中で何が必要だったか、あって嬉しかったか、残念だったかをまとめてみました。

 

ラボ(実験場所)について

BiohackerやDIY bioの本領は自宅で実験だ!と言えば威勢は良いです。確かに実験機材や試薬を自己調達できるようになり、自前でできることが増えたのは事実で、それがゆえのBiohackerムーブメントです。でもクリーンベンチ、ドラフト、CO2インキュベーター、ガスボンベとなってくると、コストや法制面で、個人住宅では無理です。ネットオークションで大型実験機材を入手できても、運用できません。

そうなると、一般人が利用できるラボ、つまり「バイオスペース」があると非常にありがたいです。ただ、アメリカでも一般的とは言えない中で、国内には山口の例以外にバイオスペースがまだ無いという課題があります。OpenBioClubのような動きがありますが、これが日本版Counter Culture Labになるか!?と個人的には期待してます。

その状況の中で、リバネスラボが使えるようになったことは非常にありがたいです。ただし”Shojinmeat Project”がリバネスラボを使えるようになったのも、自宅実験での成果があったり、色々調整して特別に許可を得てのことです。

とにかく「インディー・バイオベンチャー」としては、自宅含めて利用できる施設は利用し、とっかかり技術を開発することが重要です。バイオスペースを運用したい方がもしいらっしゃったら、「インディー・バイオベンチャー」のこの辺のニーズを汲んでくれるとありがたいです。

そしてバイオスペースがあったとして、使用料は・・・ 家賃が全体的に安い地方が狙い目・・・?かもしれないけど、少なくともうちは色々な人と刺激しあう環境が絶対必要です。なので拠点はやっぱり都心に必要です。でもそうなると、当然家賃は高くなるので、なかなかきつい選択です。

考えることは色々ありますが、そんなにハイスペックじゃなくていいから、とにかくラボが欲しいです!!

 

博士号・専門知識について

博士号や専門知識(※修士号以上)はこれまでのところ必須でした。インディーズならなおさらだと思います。

というのも、「インディー・バイオベンチャー」は大学や企業の後ろ盾が無いので、専門知識や博士号など、他の形で説得力を確保しなくてはいけません。海外に至っては、専門知識はともかく博士号が無いと門前払いという話も聞きます。

VCやエンジェルにとっての「信用」を得るために必要な「事業計画」ですが、これを作るには今の手持ちの技術で何ができて何ができないのか、今後どんな技術を開発すれば何ができるようになるか、その開発の具体性はどうなのか、を見極める必要があります。これには分野の専門知識がないとできません。

でもこれは事実上問題にならないと思います。そもそも「インディー・バイオベンチャー」なんて立ち上げようと考えるのは、その道に専門知識がある人だけです。リプロセルのような、専門知識がない人が創業者な例でも、事業計画を組み立てたり、アドバイスを求めたりするうちに、専門知識を持っている人を取り込むことになると思います。

というわけで「博士号・専門知識」についてまとめると、すでに持っている人は特に問題なし、持ってない人は仲間集めから!だと思います。

 

メンター・サポートについて

ユーグレナの出雲社長のように、一度「インディー・バイオベンチャー」を企業からM&Aか上場までもっていった人なら、メンターいらないかもしれません。でもそんな人は国内では数えるほどしかいません。大学の先生は技術に関してはメンターになりますが、経営や資金調達となると話は別です。

個人としてのふるまい方は親に教わりますが、経営とか資金調達とか、法人としてのふるまい方を教えてくれるのがメンターです。うちはこれまでメンター(リバネス)にお世話になりっぱなしです。

リバネスのメンタリングで特にありがたかったのは、「誰々とつなぐ」とか「アドバイスする」などの口だけ・メールだけではなく、申請書を書くために一緒に徹夜したり、イベントに読んでくれたり、事業を協業してくれたり、これでいいのかと思うほどの実働があったことです。こちらに罪悪感が残るレベルでお世話になりました・・・特に去年度のNEDOプロジェクトへの申請で、一緒にRed Bullキメて徹夜させた件は正直スマンカッタ・・・orz でも事業計画書や研究開発計画をひねり出すことができました。

アメリカのバイオ系のシードアクセラレーターはその辺のニーズをつかんでおり、「バイオのY-Combinator」と呼ばれるIndieBio http://sf.indiebio.co/ や、培養卵白を作るClara Foods社を生んだCounter Culture Labs https://counterculturelabs.org/ が活動しています。日本ではリバネスがこの役割を担っていると思います。

バイオに限らず研究開発主導型ベンチャーでは、専門知識を持っている人がいないと、研究計画や事業プランを描けないのは自明です。ということは、「インディー・バイオベンチャー」がメンターを選ぶにあたっては、「専門知識を持っていて、それを使って事業計画を一緒に練ることができる人や団体」を見つけるのが重要だと思います。

 

VC/投資家について

技術ができてきて、事業計画もできてきて、そろそろ投資家に話を持っていくかというステージになります。うちはこのステージに入りつつあります。

この後数行、暴露話になってしまうので個人名・企業名は一切伏せます。

こちらの技術開発状況や事業計画の練り具合は差し置いて、時折投資家側からアプローチが来ています。ただしこちら側の態勢が整っていたとしても、ここは無いなという非常に残念な例がとても多いです。。。(´・ω・`)

一番多いのは、これまでITベンチャーへの投資をしてきたけど、そればかりじゃ今後どうかと思うのでバイオとか研究開発型ベンチャーにも手を広げたい、という例です。

半年で行けそうなのか見極めたいとか、4年で上場できるのかとか考えているタイムスパンやリスク構造がまったく合わない「あるある」な例も多々ありました。あまりにもテンプレ通りのすれ違いで拍子抜けしたほどです。

彼らのほぼ全員が、「ビジネス面で支援できる」とオファーしてくれます。ところが残念ながら、IT系VCが考えている「ビジネス面での支援」は、シード期のバイオベンチャーにとっては役に立ちません。

インディー・バイオベンチャーにとっての「ビジネス面での支援」のニーズは、「手持ちの技術を見極め、知財運用が組み込まれた事業計画を一緒に練る」ところにあります。でも、それができる水準の専門知識や技術の理解を持ち合わせているIT系VCの数は・・・・ 一方で海外に目を向けると、理系出身で専門知識を持ったVCやエンジェルが多々います。実際うちでも「ここなら出資受けたい!」と思えたVCは、アメリカのVCでした。

でも、国内でもそんなVCが始動していてかなり期待しています。 http://www.realtech.fund/

とにかく、「インディー・バイオベンチャー」がシード期に出資を受けることは、新たなメンターをつけることでもあります。なのでメンター選びと同じ考え方で出資者選びをすることになるな思います。

というわけで以上を1行でまとめると、「インディー・バイオベンチャー」するならば、専門知識は必須、ラボ欲しい、メンター欲しい、投資家選びはメンター選びの基準に準ずる、です。