OTAKUと宗教(2)

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(旧個人ブログ、http://yukihanyu.exblog.jp/24175527/ より引っ越し)

「そもそも世界のOTAKUたちは、信仰とどう折り合いをつけてるの?」

この問いについて、前回はインドネシアの「イスラムOTAKU会(http://www.islamicotaku.com/)」とムスリムコスプレイヤーの事情を紹介しました。

今回は米国のキリスト教系アニメブロガー連合が運営するブログメディア、”Beneath the Tangles”について紹介します。

“Beneath the Tangles”はCharles Sadnick(TWWK)氏が2010年に設立したサイトで、ブロガー12名を中心に運営されており、主にクリスチャン視点でのアニメレビューを扱っています。ブロガーの年齢層は高めで、旧来型のOTAKUが多い印象を受けます。コスプレしてボカロやラブライブを踊っている人たちよりも10歳弱年上の印象です。このブログメディアの自己紹介やミッションステートメントにも、信仰と折り合いをつけようとするOTAKUの姿が見えます。
まずは「私たちについて(About us)」のページです。
http://beneaththetangles.com/about/
===(訳文)=====================================
ABOUT US
もしこのサイトに始めてきたのであれば、これはジョークサイトか、宗教をネタにしたサイトかと思ったかもしれません。でも、アニメにキリストの教えを見ることはできないでしょうか?普通に考えれば接点は無いでしょう?

アニメで意図的にキリスト教が登場することはまれです。このサイトでそれに文句を言うわけではありません。人は皆、生まれるとすぐに神の御業を大自然に、対人関係に、そしてマスメディアでも見ることになります。Timothy Keller(アメリカで有名な神父)の言葉を借りると、クリスチャンにとって全ての物語は二つの意味を持ちます。一つは物語の著者が考えたもの、そしてもう一つは、何らかの形での神の教えです。アニメも同じです。

このサイトでは皆さんと一緒に、アニメをキリスト教のレンズで見つつ、神の教えをアニメとマンガに見ようと思います。”Beneath the Tangles”では、様々な信仰を持つ人(持たない人も含めて)が集まり、安心して心と宗教、そしてアニメについて語り合える場を作ろうと思います。

どこから見ればいいか分からない方は、このエントリーあたりから見てください。我々の活動が大体分かると思います。以下の書き込みも参考になると思います。

Hourou Musuko and a Prayer from the Heart  (放浪息子)
Puella Magi Madoka Magica 07: From Adam to Jesus  (まどマギ7話)
Burn, O My Cosmos! Comrades At Arms and Fighting the Good Fight in Saint Seiya  (聖闘士聖矢)
Anime Today: Sharing Anime with Family  (家族でアニメを見るには?)
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ざっくりとした自己紹介であるAbout usとは別に、”Our Values and Beliefs”(設立のねらい・ミッションステートメント)という、もっと突っ込んだ自己紹介をしているページもあります。そこでは、他のクリスチャンがアニメという存在をどう見ているかも端的に述べられてます。OTAKU趣味は他のクリスチャンになかなか理解してもらえていないようです。そもそも「クリスチャン」という存在自体が色々言われている様子も見えてきます。創設者のTWWK氏も色々苦労したのでしょう。

http://beneaththetangles.com/our-values-and-beliefs/
===(訳文)=====================================
我々が信条とすること
ここに初めて来た方は、”….!?!?”と思われるかもしれません。キリスト教とアニメの繋がりは一見分からないですが、ブログ活動はクリスチャンとそうでない人の双方に価値があると考えています。以下に我々が信条としている事柄を紹介しております。このサイトの主旨やねらいのご理解のためにも、ぜひともご一読をお願いします。

「キリスト教」
当サイトのブロガーは全員クリスチャンです。キリスト教について良く思われていない方は、とりあえずこれまでクリスチャンについて知っていることは置いておいてください。これまで遭遇したかもしれない偏見・誹謗・差別等はさしおいて、我々を直視してください。我々は全員、生い立ち・経験・教条(宗派)のわずかな違いこそあれど、重要な所では一致しています。それは、人は罪深く、創造者である神に許しを請う存在であること。神はイエスキリストを地上に使わし、キリストは人間の罪の全てを背負って十字架に付けられ、復活したこと。そして我々は赦され、永遠の救済と聖霊を神より賜ることです。

(#私自身はクリスチャンではないので、この訳を含め、クリスチャンの教条についての訳はニュアンスや厳密なところで間違っているかもしれません。すみませんorz)

「宗教」
当サイトのブロガーはキリスト教が唯一の真実であると信じていますが、他の信仰を持つ方(持たない方も)の参加も歓迎します。我々は全ての信仰、そして我々の信仰についての質問も尊重します。このサイトは、そのような質問が安心してできる場所になることを目指しています。

「人文/人界」(”humanity”の訳・・・難しいorz)
表立って言っているかはともかく、ほとんどの文化は「性善説」であり、人の営みは善意から来ているとしています。このサイトのブロガーは、人間は色々と素晴らしい事をすると考える一方、罪深い存在であるとも考えています。この不浄さが我々を聖なる存在たりえなくし、神と同じ壇上に立てなくしています。地獄は神から放擲される場所として存在しています。しかし、神は救済の道も用意しています。我々のミッションは、この真実を人に伝えることです。

「聖書」
当サイトのブロガーは聖書を、2千年前に神の啓示で書かれた権威ある書物であり、66編の詩・伝記・手紙などの集合体として、背景の理解と共に読むべきものであると考えています。それと同時に、聖書は最初から最後まで神による人類への救済というメッセージで首尾貫徹していると考えています。ブログの中でも、よく聖書の一節が引用されています。

「アニメ」
我々は、多くのクリスチャンがアニメを(他のメディアと同じく)関わりを持たないか、ことによってはNOと言うべき存在であると考えていることを認識しています。我々は、クリスチャンの方が気にかける様々な事項に関しては万全を期しています。これは特に、我々が「おすすめアニメ」として推すものについて当てはまります。その一方で、アニメも美しく、楽しくクリエイティブで、なおかつ神や人間についても色々な示唆をしてくれる表現手法であると考えています。アニメは悪でも何でもなく、(Anime is NOT evil)クリスチャンが視聴しても「反キリスト的だ」と気負いする必要もありません。

(# 英語圏のOTAKU界には”anime is evil”という流行の言い回し(ネタ)があります。)

「ミッション」
当サイトのブロガーは、キリストを通じて神の福音を世界に伝えることはクリスチャンの義務であると信じています。このサイトでは、そのメッセージをアニメとマンガについての議論を通じて伝えようと思います。”Beneath the Tangles”はブログであると同時に、ミニスター(キリスト教のミッションに携わるもの)でもあるのです。
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以上が、クリスチャンOTAKUブロガー連合、”Beneath the Tangles”の紹介ページの訳です。

まとめ方としては大雑把かもしれませんが、”Beneath the Tangles”のアニメブロガーは「OTAKUと信仰の折り合い付け」の答えとして、「アニメとマンガも自分たちがクリスチャンとして世界に福音を伝えるため(エヴァンジェリズム)の一つの手段である」としているようです。

そして、彼らが行った「OTAKUと信仰の折り合い付け」についての意識調査のレポートページはこちらです。
http://beneaththetangles.com/resources/anime-and-religion-survey/
この意識調査では、”Beneath the Tangles”に出入りするクリスチャンOTAKUブロガーから人づてで回答者を集めて集計しており、回答者にはアメリカ人以外、クリスチャン以外も含まれています。分量があるので1回では無理そうですが、次回は調査の方法と結果を紹介しようと思います。