「OTAKU」が世界で広まっているという話を主流メディアでも頻繁に聞くようになってから数年が経過しています。先進国はともかく、新興国でもネット普及に伴い、インターネット文化と、それに相乗りしている「OTAKU」が大きな広がりを見せています。中東・アフリカにも波及しており、エジプトでは2014年に同国初のアニメイベント「EGYCON」が開催されました。今年もやったそうです(http://www.comicsgate.net/home/2015/03/05/egycon2/)。意図したかどうかは別として、草の根的に輸出されまくっているのがOTAKU文化です。
しかし(OTAKUを含む)舶来文化は、何らかの形で現地の文化と折り合いをつけなければいけないという宿命を帯びています。そして世界の多くの国には、その国の文化の中枢をなす概念があります。「宗教」です。
すると色々な疑問が出てきます。
イスラム教徒はコスプレするの?
偶像崇拝禁止のところでフィギュアはどうなるの?
パンチラとかファンサービスとかBLとか、キリスト教的にはどうなの?
そもそも世界のOTAKUたちは、自分の信仰とどう折り合いをつけてるの?
「OTAKUと宗教」については、残念ながら日本語ソースではまともな情報がほとんど見つかりませんでした。普通に検索しても「ドナルド教」だの「アイドルオタクは宗教」だの、「まどか教会が建立された」といった「ネタ」しかでてきません。
そして意外かもしれませんが、英語ソースでも状況は似たり寄ったりです。それもそのはず、OTAKUコミュニティーを覗いてみると、掲示板にはほぼ必ずといっていいほど「政治・宗教の話はしない」というルールがあります。暗黙の了解か、明文化されたルールかの差はありますが、どこでもけっこう徹底されています。OTAKUは趣味の話であり、趣味の話をする場所で宗教の話はしない、というのは常識なのです。
OTAKUという文化輸出を考える上で「宗教との折り合い付け」は避けて通れません。そこでこのシリーズでは、なんとか見つけた数少ない英語ソースの翻訳とSNSでの拾い物を中心に、「OTAKUと宗教」について数回に分けて紹介していこうと思います。
というわけで、初回はこちらのページ
Muslim anime community bridges their faith and hobby
「趣味と信仰の橋渡しをするムスリムのアニメファンたち」 (原文はリンク先参照)
ポイントは
・ムスリムコスプレイヤーの写真
・国民の95%以上がイスラム教徒のインドネシアだが、コーランどおりにスカーフを被るといじめられることもある
・イスラム教徒の腐女子
あたりでしょうか。
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ISISの行為によりついに日本人の犠牲者が出る中、インドネシアの人々は折り合いをつけるのが不可能に見える二つの文化の橋渡しをしようとしている。イスラムとアニメだ。
インドネシアは5世紀より様々な文化を融合してきた。例えば「ヒンズー様式のモスク」を交えてイスラムの教義を説くワヤン(影絵)芝居だ。そして今日、コスプレ衣装をイスラムの掟に合わせるアニメファンがいる。
2015年1月に開催されたアニメイベントにて、Islamic Otaku Community(IOC、イスラム・オタク会)代表のRio氏が、IOCがイスラム教徒も参加できるアニメコミュニティーをなぜ作ったかについて、KAORI Newslineに語った。
「子供の頃からアニメを見るのが好きだったのと同時に、イスラム教徒である自分と同じ考えを持つ人と会いたかったのです。こんな経験をした人は自分だけじゃないと確信しています。」
2014年4月、IOC設立時は主に「ヒジャブ・コスプレイヤー(イスラム教に合わせたコスプレイヤー)」が中心でした。が、その後にイスラム教徒のアニメファンなら誰でも入れるようにしました。主な活動は衣装制作、月例会、教義的に視聴OKな新作・旧作アニメの、Facebookやtwitterを通じた情報交換などです。
Rio氏はヒジャブを被るかという個人的な選択についても、IOCというコミュニティーが支えになっているとしている。一部のメンバーはIOC加入後もヒジャブを被るか迷っているが、加入後は普段も被るようになったりしている。
インドネシアは人口の大部分がムスリムだが、だからといってIOCが差別を受けないわけではない。例えばRio氏自身も他のアニメファンやコスプレコミュニティーから嫌がらせを受けたことがある。
「なぜ新しい事をやろうとすると嫌がらせを受けなければならないんだか。どうしようもない。」
IOCのメンバーのほとんどが女性なので、KAORI Newslineは「腐女子・BL好き」もいるかと質問した。Rio氏は、それは普通だと答えた。
「信仰が何だろうと、(ヒジャブの有り無し等)服装が何だろうと、アニメイベントに一歩入れば一人のオタクだ。」
そこで腐女子が好むコンテンツ(BL)についてRio氏は、「コミュニティーは指針を提示するだけで、後は個人が各個に判断することだ。メンバーはIOCに入って変わることができた。ただ、我々は個人の奥底の趣味趣向までは知りえない。」とした。
The Indonesian Anime Times (インドネシア・アニメタイムズ、インドネシア語原文をKevin Wが翻訳)